【犬・猫】乳腺腫瘍 ~乳腺腫瘍を予防するための避妊手術の重要性~

今日は犬・猫の乳腺腫瘍についてご紹介します。

 

ご存知の方も多いかと思いますが、犬・猫でも乳腺腫瘍が発生することがあります。

乳腺腫瘍のうち、悪性のものは「乳腺癌」と呼ばれ、摘出手術だけでなく、時に抗がん剤等を用いた全身性の治療が必要となります。

 

犬では乳腺腫瘍の50%が悪性、さらに猫では乳腺腫瘍の約80%が悪性と言われ、発見した際には領域リンパ節や肺に遠隔転移していることもあります。

はじめの写真は11歳のMダックスで、右乳腺の大きなしこりを摘出し、「乳腺癌」という診断結果でした。

早期に診断・摘出手術を実施したおかげでその後も元気に過ごすことができました。

 

11歳、Mダックス、未避妊メス

右乳腺に大きなしこりあり。

右側乳腺摘出術を実施。病理検査にて「乳腺癌」と診断。

 

摘出された乳腺腫瘍。

 

一方、次の写真は18歳、日本猫、乳腺の小さなしこり(1 cm)を病理検査に出したところ、「乳腺癌」との結果でした。

猫ちゃんたちの乳腺腫瘍は、たとえ小さくても悪性度が高い、と覚えておいて下さい。

 

18歳、日本猫、避妊メス
乳腺に小さなしこりあり。摘出後の病理検査にて「乳腺癌」との診断。

この子は保護猫ちゃんのため、避妊手術が遅れてしまった。

初回発情以降、特に1歳以上で避妊手術をした場合、乳腺腫瘍の予防効果は11%にまで低下する。

 

乳腺癌は人でもよく耳にする癌の一つですが、人では定期検診による早期発見と早期治療が主流で、皆さんの中にも乳がん検診を受けられた方が多くいらっしゃるのではないでしょうか?

一方で、犬・猫では乳腺腫瘍の発生を予防する方法があります。

それは、若い頃の「避妊手術」です。

 

犬・猫の乳腺腫瘍は女性ホルモンの影響を受けて発生することが知られており、初回発情前に避妊手術を行うことで、高い予防効果があると分かっています。

その予防効果は犬でほぼ100%、猫で約90%。

若く健康な頃に避妊手術をするだけでこれ程の予防効果があるなんて、びっくりですよね。

 

そのため当院では、仔犬・仔猫を産む予定が無い子たちは生後6ヶ月頃、発情が来る少し前に避妊手術を実施することを推奨しています。

乳腺腫瘍だけでなく、発情周期による体調不良や、子宮に膿が溜まる子宮蓄膿症などの病気も予防することができます。

 

犬の避妊手術の時期 乳腺腫瘍の発生率
初回発情前 0.05%
初回~2回目の間 8%
2回目発情以降 26%(4頭に1頭)

 

猫の避妊手術の時期 乳腺腫瘍の予防効果
生後6ヶ月までに 91%
7~12ヶ月齢 86%
13~24ヶ月齢 11%

 

避妊手術の時期が来た若いワンちゃん・猫ちゃん(6ヶ月齢)には手術のご案内をお送り致しますので、病院に遊びに来て獣医師・看護師にお気軽にご相談ください。

 

また、同じタイミングで対応した方が良い遺残乳歯(抜け損なった赤ちゃんの歯)がある場合は、同じ1回の麻酔中に抜歯してあげることをお勧めします。

乳歯の生え変わりチェックも一緒にしましょう。

 

遺残乳歯

 

また、避妊手術のタイミングを逃してしまった子たちも、お気軽にご相談ください。

一般的には、年齢が上がるにつれて麻酔のリスクも高くなりますので、なるべく早めの手術をおすすめ致します。

 

最後に、高齢の犬・猫と一緒に暮らしているご家族の皆さまにお願いです。

普段から、お家の子をたくさん触って、よく見て、「なんだろう、このしこり?」と感じたらすぐにご相談下さい。

元気な頃に予防して、年をとってからは早期発見。

これが理想的な乳腺腫瘍との付き合い方だと感じます。