【愛犬・愛猫の目が痛そう!】角膜潰瘍のサインと治療法
滋賀県 草津市/大津市のエルム動物病院です。
今回は「犬猫の角膜潰瘍」についてご紹介します。
「うちの子、なんだか目をしょぼしょぼさせているな…」
「涙がたくさん出ているし、目が赤くなっている?」
もし、あなたの愛犬や愛猫にそんな様子が見られたら、それは「角膜潰瘍」という目の病気かもしれません。
角膜潰瘍は、放っておくと失明につながることもある、とても注意が必要な目の病気です。今回は、飼い主さんが知っておきたい角膜潰瘍について、分かりやすくお話しします。
角膜潰瘍ってどんな病気?
犬や猫の目の表面には、「角膜」という透明な膜があります。これは、例えるなら目の「窓ガラス」のような役割をしていて、光を目の中に入れるだけでなく、外部からのバイ菌やゴミが入るのを防ぐ、大切なバリアでもあります。
角膜潰瘍は、この窓ガラスである角膜の表面に傷がつき、組織がえぐれてしまった状態を指します。角膜は非常に敏感な場所なので、小さな傷でもワンちゃんやネコちゃんは強い痛みを感じます。また、適切な治療をしないと、傷がどんどん深くなったり、バイ菌が入って炎症を起こしたりして、最悪の場合、角膜に穴が開いて(眼球穿孔)失明してしまうこともあります。
だからこそ、「あれ?おかしいな」と気づいたら、すぐに動物病院に連れてきてあげることが、何よりも大切なのです。
【ポイント!】
病院で行う「フルオレセイン染色検査」では、特殊な目薬を点眼することで、傷ついた部分が緑色に光って見えます。これで、どこにどれくらいの傷があるかを確認します。
(※フルオレセイン染色検査の写真:緑色の箇所が潰瘍です)
どうして角膜潰瘍になるの?主な原因はこれ!
角膜潰瘍の原因は一つではありません。日常生活に潜む様々なことが原因になります。
●目のケガ(外傷)
・犬:散歩中に草や枝で目を擦ったり、他の犬とのケンカで爪が当たったり、顔をこすりつけることで角膜に傷がつくことがあります。
・猫:他の猫とのケンカでの引っ掻き傷、遊んでいる最中に何かが目に当たることで角膜に傷かつくことがあります。
●目にゴミや異物が入る
砂や小さなゴミ、まつ毛、植物の種などが目に入り、角膜を傷つけてしまうことがあります。
●バイ菌やウイルス感染
・犬:細菌やウイルス(犬ヘルペスウイルスなど)、カビなどが原因になることもあります。
・猫:特に猫ヘルペスウイルス感染症が最も多く、子猫や体の弱っている猫で重い角膜潰瘍を引き起こすことがあります。
●涙の量が足りない(ドライアイ)
涙の量が少なかったり、涙の質が悪かったりすると、角膜が乾燥しやすくなります。乾燥した角膜は非常に傷つきやすくなります。犬によく見られます。
●まぶたやまつ毛の異常
・逆さまつげ: まつ毛が目の表面に当たって刺激し続ける。
・まぶたの形がおかしい(内反症・外反症): まぶたが内側にめくれ込んだり、外側にめくれ返ったりして、目の表面を刺激してしまう。
こんなサインに気づいて!角膜潰瘍の症状
愛犬・愛猫が角膜潰瘍になると、飼い主さんが気づくことのできるサインがいくつかあります。
- 目をしょぼしょぼさせる、まばたきが多い:強い痛みを感じているサインです。
- 涙がたくさん出る:目が刺激されているため、涙が増えます。
- 目を気にする:前足で目をこすろうとしたり、顔を床や物に擦り付けようとしたりします。
- 光を嫌がる:明るい場所を避けたり、目を細めて閉じ気味にしたりします。
- 白目が赤い(充血):炎症が起きている証拠です。
- 目ヤニが増える:サラサラしたものから、ネバネバ、ドロドロしたものまで様々です。バイ菌が入っていると、黄色や緑色の膿のような目ヤニが出ることもあります。
- 目が白く濁る:角膜の傷が深いと、白い曇りが見えることがあります。
- 目頭の白い膜が出てくる(瞬膜突出):普段は見えにくい目頭の白い膜(瞬膜)が、目の痛みや炎症によって飛び出してくることがあります。
【猫の飼い主さんへ】
猫は痛みを我慢するのが得意な子が多いです。そのため、犬のように大げさに痛がらず、少し涙目になっている、目を細めている、元気がない、食欲がないといった些細な変化しか見せないこともあります。見逃さないように、日頃からよく観察してあげてください。
診断と検査:目で見て分かる大切な検査
角膜潰瘍は、主に以下のような目の検査で診断をします。
- 視診:獣医師が直接、目の状態(濁り、充血、目ヤニなど)を確認します。
- フルオレセイン染色検査:これが最も重要な検査です。無害な緑色の特殊な目薬を点眼し、青い光を当てると、角膜の傷ついた部分だけが緑色に光って見えます。これで傷の大きさや深さが分かります。
- スリットランプ検査:目の奥まで細い光を当てて、角膜の傷の深さや、目に異物がないかなどを詳しく調べます。
- シルマー涙液試験:涙の量を測り、ドライアイが原因ではないかを確認します。
- 目ヤニの検査:バイ菌やウイルスが原因の疑いがあれば、目ヤニや目の表面から細胞を採取して、顕微鏡で調べたり、ウイルスの検査をしたりします。
これらの検査結果を総合的に見て、角膜潰瘍の原因や重さ、そしてどう治療していくかを判断します。
- 角膜潰瘍の治療法
治療は、角膜潰瘍の原因や深さ、感染の有無などによって大きく異なります。
【内科的治療】
- 抗菌薬の目薬:バイ菌の感染を防いだり、治療したりするために使います。
- 抗ウイルス薬の目薬・飲み薬:猫ヘルペスウイルスが原因の場合に使います。
- 目の保護と潤いを与える目薬(人工涙液など):角膜の乾燥を防ぎ、傷の治りを助けます。
- 痛み止め:目の痛みを和らげるお薬を使うこともあります。
- エリザベスカラー:ワンちゃん・ネコちゃんが目を掻いたりこすったりしないよう、装着してもらいます。掻かない、こすらないことが非常に重要です!
【手外科的治療】
- 傷が深い場合や、お薬で治らない場合、穴が開きそうな場合などに検討します。
- 瞬膜フラップ術:目頭にある白い膜(瞬膜)を一時的に角膜に縫い付けて、保護したり、傷の治りを早めたりする方法です。
- 結膜フラップ術:目の周りの健康な組織(結膜)を移動させて、傷ついた角膜を覆い、治りを助ける方法です。
治療中は、獣医師の指示通りに目薬をさす、お薬を飲ませる、エリザベスカラーをつけることが非常に大切です。定期的に病院で目の状態をチェックしてもらいましょう。
- 角膜潰瘍を予防するためにできること
完全に防ぐことは難しいですが、リスクを減らすために飼い主さんができることがあります。
- ケガに注意!:お散歩中は草むらや枝などに気をつけ、他の犬とのケンカは避けましょう。猫の場合は、爪切りをこまめに行うことも大切です。
- 目に異物が入らないように:お散歩後や外出後は、目の周りにゴミや毛が付いていないかチェックしてあげましょう。
- 感染症の予防:猫ヘルペスウイルスはワクチンで重症化を防げる可能性があります。獣医師と相談してワクチン接種を検討しましょう。
- 目の乾燥対策:ドライアイと診断されたら、獣医師の指示に従って目薬を使い、角膜の乾燥を防ぎましょう。
- まぶたやまつ毛の異常は早めに治療:逆さまつげやまぶたの形がおかしいなど、角膜を刺激する異常が見つかったら、手術などで矯正を検討しましょう。
- 定期的な健康診断:目のチェックもしてもらい、早期に異常を発見することが大切です。
最後に
愛犬・愛猫が目を気にしたり、痛がったりする様子は、飼い主さんにとっても心配なことです。角膜潰瘍は、放っておくと重症化しやすい病気ですが、早期に発見し、適切な治療を始めることで、多くの場合は良くなります。
「いつもと違うな」「もしかして?」と感じたら、どんな些細なことでも構いませんので、迷わず当院にご相談ください。大切な家族の目の健康を守るために、一緒に取り組んでいきましょう。
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