橈尺骨骨折

近年、獣医師の頭を悩ませているものに、小型トイ犬種の橈尺骨骨折があります。
中型犬以上ではそう苦労することも無いのですが、小型~超小型犬では
体重も大半が2~4kg程であり(当院の記録は900gのポメラニアンを組み立てました)、扁平な形状の橈骨は幅4-5mm前後、厚み2-3mm位しかない場合が多く、 横骨折ならまだましですが、特に斜骨折の場合は、組み立て・安定化のもとにプレートやスクリューを装着していくのには、執刀獣医師にもかなりの技量と専用の道具が必要になり、やり慣れない獣医師が手を出すと、そうでなくても少ない軟部組織や血流を傷めつけ、癒合不全を起こしやすいので注意が必要です。
ギプスなどの外固定のみで治すのは、ほとんど変位の無い症例だけが対象となります。
創外固定術も行いますが、プレートスクリュー法に比べると技量は要りませんが、超小型犬では、術後管理を上手にしないと、これまた癒合不全につながるものがあります。
従来のステンレス素材のプレートスクリューで、十分実績は出してきましたが、以下の症例のように、適切にDestabilizationをかけていく必要があると考えています。
症例  ステンレス素材DCPプレート使用

トイプードル、5ヵ月半齢、♀、体重2.0kg、70cm位のテーブルから飛び降りて骨折。
術前の写真では、鎮静下で牽引してますので、変位が少なく見えますが、実際には、ブラブラしてとても痛がる状態でした。
骨折翌日にT字プレートと1.5mmのスクリューを用いて、整復固定し、上腕骨近位から海面骨移植を行いました。遠位成長板を損傷しないようかわしてあります。
術後33日目には近遠位1本ずつ残して、真ん中のスクリューを抜き、骨折周辺のスクリューホールが埋まるのを待ち、術後55日目には、すべてを除去して、きれいに治っております。
内固定で、がっちりと固定してあげることにより、翌日から歩行も可能となり、外固定などで関節を固めてしまったときと異なり、手根関節も普通に曲がる状態を維持できました。
2010年、LCP(synthes)導入。2011年、ALPS(KYON社、チタン製)を大阪のファーブル動物病院の山口先生にお世話になり導入いたしました。
症例 ALPS(KYON社、チタン製)を使用
トイプードル、6ヵ月齢、♂、体重2.1kg、階段から落下して骨折し、主治医からCLARKを紹介された。
翌日から負重歩行可能。 ポイントコンタクトなので、骨膜への血流阻害が少なく、良好な治癒が期待される。